葉酸とは?3つの働きと不足するリスク・必要な摂取量について解説
葉酸は、妊活や妊娠を意識し始めると、必ず目にする栄養素の一つです。赤ちゃんの健やかな発育に欠かせないといわれていますが、実際にはどのような栄養素なのでしょうか。
今回は、葉酸の基礎知識から効果的な摂取方法、注意点などについて解説します。これから妊活を始める人や妊娠中の人は、ぜひこの記事を参考に葉酸の摂取を検討してみてください。
葉酸とは:妊活・妊娠に欠かせない重要栄養素
葉酸は、私たちの健康維持に不可欠な水溶性ビタミンB群の一種です。体内でDNAの合成や細胞の分裂に重要な役割を果たしています。特に、新しい細胞が急速に作られる妊娠初期には、欠かせない重要な栄養素です。
葉酸の名称は、1941年にほうれん草の葉から発見されたことから、ラテン語の「葉」を意味する「folium」に由来しています。体内では葉酸を合成できないため、食事やサプリメントからの摂取が不可欠です。
葉酸の3つの働き
葉酸には、以下の3つの働きがあります。
- DNA・RNA合成のサポート
- 赤血球生成の促進
- アミノ酸代謝の調整
葉酸の働きを理解したうえで、適切なタイミングでの摂取を心がけましょう。
1. DNA・RNA合成のサポート
葉酸は、細胞の設計図となるDNAとRNAの合成に必要な栄養素です。特に、細胞分裂が活発な妊娠初期においては、胎児の正常な発育を支える重要な役割を担っています。
また、遺伝子の複製や修復にも関与し、健康な細胞の維持にも貢献しています。遺伝子の複製や修復は、胎児の発育だけでなく、大人の体内にも欠かせません。
2. 赤血球生成の促進
葉酸は鉄分と協力して、骨髄での赤血球の生成を助け、健康的な血液の維持に貢献します。
十分な葉酸があると、赤血球が正常に作られるので、体のすみずみまで酸素を届けることが可能です。特に、血液量が増加する妊娠中は、赤血球生成の促進が一層求められます。
3. アミノ酸代謝の調整
葉酸は、体内でのアミノ酸代謝を調整する重要な役割があります。特に、ホモシステインという物質の代謝に関与し、血中濃度を適切なレベルに保つ働きがあります。
これにより、心血管系の健康維持や神経系の正常な機能のサポートが可能です。また、タンパク質の合成にも関わるので、体の組織の修復や維持にも貢献しています。
葉酸不足の3つのリスク
葉酸が不足すると以下の3つのようなリスクがあります。
- 胎児への影響
- 貧血のリスク
- 精神面への影響
葉酸不足のリスクを理解したうえで、摂取を検討しましょう。
1. 胎児への影響
妊娠初期の葉酸不足は、胎児の神経管閉鎖障害を引き起こす要因とされています。
神経管閉鎖障害は、胎児の脳や脊髄を覆う神経管の形成に問題が生じる先天性疾患です。二分脊椎や無脳症などの重度な障害を引き起こす可能性もあるでしょう。
そのため、妊娠4週から8週の間に、十分な葉酸を摂取することが推奨されています。
2. 貧血のリスク
葉酸は赤血球の生成に重要な役割を果たしているので、不足すると巨赤芽球性貧血と呼ばれる特殊な貧血を引き起こす可能性があります。巨赤芽球性貧血は、通常より大きく未熟な赤血球が作られ、酸素運搬能力が低下する貧血です。
その結果、疲労感やめまい、息切れ、集中力の低下などの症状が現れることがあります。特に、妊娠中は貧血になりやすいため、鉄分と併せて十分な葉酸摂取を心がけましょう。
3. 精神面への影響
葉酸が不足すると、ホモシステインが血中で増加し、抑うつ症状やイライラ、不安感が強まる可能性があります。また、記憶力の低下や集中力の減退などの症状も報告されており、心身の健康にも影響を及ぼすとされています。
慢性的な疲労感や気力の低下を引き起こすことも指摘されているので、心身の健康の維持にも適切な葉酸摂取が欠かせません。
1日に必要な葉酸の摂取量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、成人女性の推奨量は以下の通りです。
- 一般成人女性:240μg/日
- 妊婦:480μg/日(+240μg)
- 授乳婦:340μg/日(+100μg)
成人の葉酸推奨量は1日あたり240μgとされていますが、妊婦は通常より240μg多い480μg、授乳婦は100μg多い340μgが推奨されています。一方で、過剰摂取による健康障害を防ぐため、サプリメントからの摂取については耐容上限量が設定されているのも特徴です。
葉酸を効率的に摂取する方法
葉酸を効率的に摂取する方法は以下のとおりです。
- 食事からの摂取
- サプリメントでの補給
葉酸は体内で合成されないため、食事やサプリメントで摂取する必要があります。それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った方法で葉酸を摂取しましょう。
食事からの摂取
葉酸は、さまざまな食材から、自然な形で摂取することができます。特に、緑色野菜に多く含まれており、以下の食材が代表的です。
- ほうれん草
- ブロッコリー
- アスパラガス
- モロヘイヤ
そのほかにも、豆類では枝豆や納豆、果物ではいちご、海藻類ではのりなども効果的な供給源となります。
ただし、葉酸は水溶性ビタミンのため、調理方法によって損失しやすいのが特徴です。茹で時間を短くしたり、茹で汁も活用したりするなど、調理方法を工夫しましょう。
サプリメントでの補給
食事だけでは必要量を確保するのが難しい場合、サプリメントの併用が効果的です。サプリメントを選ぶ際は、1日の推奨量である400μg以上が含まれているか確認しましょう。
また、葉酸の吸収を助けるビタミンB群や、妊娠に重要な鉄分が含まれている製品を選ぶのもおすすめです。価格や飲みやすさ、信頼できるメーカーかどうかなども、比較したうえで継続的な摂取が可能な製品を選ぶ必要があります。
葉酸摂取の注意点
葉酸の成人の耐容上限量は、1日あたり900~1,000μgと定められています。耐容上限量を超える過剰摂取に注意しましょう。特に、サプリメントから摂取する場合、食事からの摂取量も考慮して調整する必要があります。
また、葉酸は水溶性ビタミンのため、調理の際は茹で時間を短くしたり電子レンジの加熱時間に気を付けたりするなど、栄養素の損失を防ぐ工夫が重要です。
摂取量やほかのサプリとの飲み合わせなど、不安な点がある場合は、必ず医師や専門家に相談しましょう。
まとめ
葉酸は、妊活中・妊娠中の女性にとって、欠かせない栄養素の一つです。胎児の正常な発育を支援し、神経管閉鎖障害のリスクを低減する重要な役割を担っています。
必要量は食事だけでは不足しがちなため、サプリメントでの補給も効果的です。ただし、過剰摂取とならないように、1日の推奨量と上限量はしっかりと守りましょう。
心配な点がある場合は、必ず医師に相談し、自分に合った摂取方法を見つけるのが重要です。葉酸の摂取を検討している人は、ぜひこの記事を参考に、健やかな妊娠・出産へとつなげましょう。